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東京高等裁判所 平成5年(行ケ)21号 判決

アメリカ合衆国テキサス州 ダラス、ノース セントラルエクスプレスウェイ 13500

原告

テキサス インスツルメンツ インコーポレーテッド

同代表者

ウィリアム イー.ヒラー

同訴訟代理人弁理士

浅村皓

小池恒明

岩本行夫

山本貴和

岩井秀生

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 荒井寿光

同指定代理人

岡田和加子

吉野日出夫

幸長保次郎

園田敏雄

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  特許庁が平成4年審判第106号事件について平成4年9月17日にした審決を取り消す。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文1、2項同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「ウェブ移動装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について、アメリカ合衆国において1982年10月1日にした特許出願に基づく優先権を主張して、昭和58年9月30日特許出願(昭和58年特許願第180870号)をしたところ、平成3年9月4日拒絶査定を受けたので、平成4年1月4日審判を請求し、平成4年審判第106号事件として審理されたが、同年9月17日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同年11月9日原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として90日が附加された。

2  本願特許請求の範囲(1)項に記載された発明(以下「本願第1発明」という。)

ウェブ移動装置であって、

a.第1のギヤ装置を固定させた駆動装置、

b.ウェブが通過する駆動ロール装置にして、該駆動ロール装置の一端に固定された第2のギヤ装置を有し、該第2のギヤ装置が機械的に接続されて前記第1のギヤ装置によって回転されている駆動ロール装置、

c.前記駆動装置が作動されるとき、ウェブを前記駆動ロール装置に対抗して移動させるようにして位置決めされた第1の加圧装置、および

d.ウェブが最初に通過する無限軌道部材駆動装置にして、該無限軌道部材駆動装置が前記駆動ロール装置に隣接して位置決めされかつ機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置を含む無限軌道部材駆動装置、を包含し、

前記第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比および前記駆動ロール装置の直径と前記無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比が、前記駆動ロール装置のウェブ移動速度よりも大きく、これらの装置間に一定の張力を生じさせるようにしたことからなるウェブ移動装置(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願第1発明の要旨は、前項記載のとおりである。

(2)  本出願前に国内において頒布された昭和56年特許出願公開第93643公報(以下「引用例1」という。別紙図面2参照)には、幅方向の両側に送り用孔が一定ピッチにて設けられた連続用紙の供給装置であって、間欠的に回動駆動されるプラテンと、プラテンの送出し側にプラテンの外周面に接し、プラテンと協動して連続用紙を引き出すためのローラと、多数のピンを有するタイミングベルトを一対のスプロケットに掛装して構成されて、プラテンへの連続用紙の送込み側でプラテンに隣接して位置決めされ、プラテン及びローラと同期して回転駆動される一対のピントラクターとからなり、ピントラクターのタイミングベルトはプラテンの供給速度より若干遅い速度で間欠的に回動され、したがって、プラテンの供給速度すなわち連続用紙の駆動速度をピントラクターの送込み速度すなわち連続用紙の駆動速度よりも大きくして、ピントラクター上の用紙に送出し方向へ引張り力が作用するようになし、プラテンとピントラクターとの間に一定の張力を生じさせる連続用紙の給送装置が記載されている。

同じく、本出願前に頒布された昭和56年特許出願公開第78754号公報(以下「引用例2」という。別紙図面3参照)には、従来技術として、プラテンと、このプラテンに対し連続用紙を送込む側に配設されたピントラクタと、プラテンの下方に配設されたプレッシャーローラとを有し、プラテン及びピントラクタは、駆動モータによって歯車等を介して回転駆動され、しかもプラテンはピントラクタよりもわずかに速い周速度で回転するようになし、連続用紙はピントラクタの上方部及びプラテンの下方部に沿って、プラテンと印字ヘッド間を通過し、そしてプラテンはピントラクタよりもわずかに速い周速度で回転するため、連続用紙はピントラクタとプラテンとの間に引張られて、プラテンとの間でスリップを生じ、連続用紙はプラテンに密着するようになし、その後印字ヘッドによって印字された連続用紙は送り出され、ペーパーカッタにより切断するようになした紙送り機構が記載され(2頁左上欄6行ないし左下欄8行及び図面第3図)、さらに、この従来技術の持つ問題点、すなわち連続用紙と単票との互換性がなく、駆動モータの回転力を歯車を用いて伝達するため騒音が大きい等の問題点を解決すべく、プラテンと、このプラテンに対し連続用紙を送り込む側に配設されたピントラクタと、プラテンから用紙を送り出す側に配設されてプラテンの外周に圧接するピンチローラと、プラテンとピントラクタはタイミングベルトを介して駆動モータによって同一の周速度で回転し、かつピンチローラはタイミングベルトを介してプラテンよりわずかに速い周速度で回転するようになした伝導機構とからなり、連続用紙はピンチローラがプラテン及びピントラクタよりわずかに速い周速度で回転するために、ピンチローラとの間でスリップを生じ、ピントラクタとピンチローラとの間で引張られて、プラテンに密着するようにした紙送り機構が記載されている。

同じく、本出願前に国内において頒布された昭和57年特許出願公開第107352号公報(以下「引用例3」という。別紙図面4参照)には、プラテンローラと、このプラテンローラに対し連続用紙を送り込む側に配設されたピントラクタまたはピンホイルである給送スプロケットと、プラテンローラから用紙を送り出す側に配設ざれてプラテンローラの外周に圧接するプッシャローラと、送給スプロケットとプラテンローラを同期して回転駆動する駆動機構と、プッシャローラをその正転時には送給スプロケットよりもわずかに速い周速で回転させるとともに、逆転時には送給スプロケットよりもわずかに遅い周速で回転させる速度差形成機構とを有し、駆動機構において、送給スプロケットは駆動モータの出力歯車と送給スプロケットの入力歯車の噛合による歯車伝導系を介して回転駆動され、一方プラテンローラは駆動モータの溝付きプーリとプラテンローラの溝付きプーリにタイミングベルトを巻き掛ける巻掛け伝導系を介して回転駆動されるか、または駆動モータの出力軸とプラテンローラの支持軸の伝導系を歯車伝導系として回転駆動されるようになした紙送り装置が記載されている。

(3)  そこで、本願第1発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明において、駆動装置については特に明記されていないけれども、連続用紙の給送装置として当然に駆動装置を備えているところであり、そして、引用例1記載の発明における「連続用紙」、「プラテン」、「ローラ」、「ピントラクター」、「連続用紙の給送装置」は、本願第1発明における「ウェブ」、「駆動ロール装置」、「第1の加圧装置」、「無限軌道部材駆動装置」、「ウェブ移動装置」にそれぞれ相当するものであるから、両者は、「ウェブ移動装置であって、a.駆動装置、b.ウェブが通過する駆動ロール装置にして、回転駆動される駆動ロール装置、c.前記駆動装置が作動されるとき、ウェブを前記駆動ロール装置に対抗して移動させるようにして位置決めされた第1の加圧装置、d.ウェブが最初に通過する無限軌道部材駆動装置にして、該無限軌道部材駆動装置が前記駆動ロール装置に隣接して位置決めされ、回転駆動される無限軌道部材駆動装置、を包含し、前記駆動ロール装置のウェブ駆動速度を前記無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きく、これらの装置間に一定の張力を生じさせるようにしたことからなるウェブ移動装置」である点で一致し、次の点で相違する。

〈1〉 駆動ロール装置の駆動伝導系について、本願第1発明においては、駆動ロール装置の一端に固定された第2のギヤ装置が機械的に接続されて駆動装置に固定された第1のギヤ装置によって回転されるのに対し、引用例1記載の発明では、プラテンは駆動装置によって回転駆動されるが、その駆動伝導系の詳細については特段の記載がなされていない点。

〈2〉 無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系について、本願第1発明においては、無限軌道部材駆動装置の第3のギヤ装置が機械的に接続されて駆動ロール装置の第2のギヤ装置によって回転されるのに対し、引用例1記載の発明では、ピントラクターは駆動装置によってプラテンと同期して回転駆動されるが、その駆動伝導系の詳細については特段の記載がなされていない点。

〈3〉 駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きく、これらの装置間に一定の張力を生じさせるために、本願第1発明においては、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比を設定しているのに対し、引用例1記載の発明では、特段の記載がなされていない点。

(4)  次に、これらの相違点について検討する。

〈1〉 相違点〈1〉及び相違点〈2〉についてみると、引用例2には、プラテンとピントラクタを、歯車等を介して駆動モータによって回転駆動するようになした点、及びタイミングベルトを介してではあるが単一の駆動モータによって回転駆動するようになした点が共に記載され、また引用例3には、本願第1発明の駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置にそれぞれ対応するプラテンローラとピントラクタの送給スプロケットを単一の駆動モータによって回転駆動するに際し、歯車伝導系と巻掛け伝導系とを適宜選択できるとし、すなわち単一の駆動モータにより歯車伝導系を介してそれぞれを回転駆動するようになした点が記載されているところであって、駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすることは、当業者が適宜選択的になし得る程度の設計上の問題にすぎないものであり、また本願第1発明においては、駆動ロール装置の一端に固定された第2のギヤ装置を駆動装置に固定された第1のギヤ装置にそして無限軌道部材駆動装置の第3のギヤ装置を駆動ロール装置の第2のギヤ装置にそれぞれ機械的に接続しているが、単一の駆動モータ等の駆動装置を用いて2つの部材を回転駆動するに際し、2つの部材をそれぞれ別個の伝導系を用いて駆動するか、1つの伝導系すなわち駆動装置から1つの部材へそしてその部材から他の部材へと伝導する系を用いて駆動するかは、当業者がそれらの装置の構造、配置やスペース等を勘案して適宜設計し得る程度の設計上の問題にすぎないものである。

よって、駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系について、引用例1記載の発明には特段の記載がなされていないとはいえ、これらの駆動伝導系を本願第1発明のごとくなすことは、当業者が格別困難性を伴うことなく容易に想到し得る程度のものである。

〈2〉 次に、相違点〈3〉についてみると、駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きくするためにどのような手段を採用したかについて、引用例1は勿論のこと、引用例2及び引用例3にも具体的に明記されていないところではあるけれども、回転体の回転速度や周速度は、歯車伝導系においては駆動装置の回転角速度及び噛合するギヤのギヤ比や回転体の直径により、巻掛け伝導系においては駆動装置の回転角速度及びスプロケットやプーリの直径比や回転体の直径により定まることは技術常識からみて明らかであって、対比する2個の回転体の回転速度比、周速度比は、歯車伝導系においてギヤ比や回転体の直径比の設定により決定されるところである。

したがって、駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動装置よりも大きくするために、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比を設定することは、当業者が適宜なし得る程度のものである。

(5)  そして、本願第1発明は、全体構成でみても、引用例1ないし引用例3記載の発明から予測できる作用効果の総和以上の顕著な作用効果を奏するとは認められない。

(6)  したがって、本願第1発明は、引用例1ないし引用例3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4  審決の取消事由

審決は、本願第1発明及び引用例1記載の発明の技術内容を誤認して一致点に対する認定を誤り、相違点〈1〉ないし相違点〈3〉に対する判断を誤り、本願第1発明の顕著な作用効果を看過し、その結果、本願第1発明は引用例1ないし引用例3記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たとの誤った結論を導いたもので、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)

〈1〉 審決が、引用例1に記載された「ローラ」は本願第1発明の「第1の加圧装置」に相当すると判断したのは誤りである。

〈2〉 本願第1発明における「第1の加圧装置」は、本願明細書中の「複数個の下側一次ローラ20及び出口ローラ22」である。そして、本願第1発明における「第1の加圧装置」は、本願発明の特許請求の範囲(3)項との関係からみて、その20またはその22のいずれか少なくとも一方を指称するものである。この下側一次ローラ20及び出口ローラ22は、「それぞれ心軸24及び26上に回転装着されており、紙ウェブ28を第2図に示すようにローラ14のまわりに強制移動せしめるように配置されている。」と説明されている。

したがって、本願第1発明の「第1の加圧装置」は、その「加圧」という名称のとおり単に紙ウェブ28を駆動ロール装置14に押圧するだけの機能しか有せず、明細書の記載をみても駆動機構と接続されていない。

このように、本願第1発明の「第1の加圧装置」が、何らその駆動機構と接続されていることを要件としないのは、次の理由による。

すなわち、本願第1発明による紙ウェブは、「一定の張力を生じさせるように」されているから、その「第1の加圧装置」は本来、何らかの方法で駆動機構と接続され、紙ウェブを引き出すように構成されなければならない。さもないと、紙ウェブがロール14に密着できないばかりでなく、紙ウェブを正確に引き出すこともできなくなるからである。

そして、本願第1発明では、「第2のギヤ装置」と「第3のギヤ装置」とが歯車伝導系とされ、かつ、両ギア装置が「隣接して位置決めされ」ているので、正確な紙送りが可能となり、したがって、その「第1の加圧装置」が駆動機構と接続されていなくても、その加圧機能だけで十分に紙ウェブをロール14に密着させ、かつ、正確に引き出すことができる。

これをさらに詳述すると、本願第1発明の「加圧装置」は、無限軌道機構とプラテンとの間の間隔が、ギヤ装置による駆動機構を用いたことにより小さくなっているので、用紙に張力を与えるために、他の引用例に記載の加圧装置のようなプラテン機構と同期する加圧装置によって、積極的に紙を引張るように保持させる必要はない。というのは、無限軌道機構とプラテン機構との間の間隔が小さいので、加圧装置に用紙のゆるみ、ずれ等の変動が小さい段階でプラテン機構に用紙が巻き付けられ、無限軌道機構の用紙送りの作用も残っていて、さらに巻付け角度も大きくとることができ、用紙の保持が容易なことから、張力を与えるために加圧装置をプラテン機構に強力に押し付けたり、そのためにプラテン機構と同期した回転を与える必要もなく、ただ加圧すればよいことになるからである。このことは、本願第1発明の構成において、その「第1の加圧装置」をその駆動機構と接続させることは技術的に不可能であること、及び、本願第1発明の目的、作用効果に関する本願明細書の記載をみてもそのよう、に接続する態様は排除していると解されることから、明白である。

なお、本願第1発明のような紙ウェブが「一定の張力を生じさせるように」されている従来技術の紙送り装置において(引用例1ないし引用例3、乙第1号証)、引用例2、引用例3記載の発明は、被告も自認するとおり、すべてその駆動機構と直接接続されており、また、乙第1号証記載の「スリップ機構」は「押付け力を適当に選択」(8頁12行、13行)しなければならないという複雑な調節操作を必要とし、しかも、その操作のために「スプリング46」等の部材を必須(8頁18行、19行)としており、本願第1発明のように、きわめてシンプルな加圧する機能だけの装置とは明らかに異なるものである。

〈3〉 これに対し、引用例1記載の発明における「ローラ」は「引出し装置」であって、以下の理由からして駆動機構と接続している。

イ.引用例1の特許請求の範囲には、プラテン2及びローラ4について「引出し装置(2、4)」と記載されており、「引出し」という用語自体がこのことを表現している。

ロ.引用例1には、「このタイミングベルト5a、プラテン2及び前記ローラ4は同期して回転駆動されるようになっている。従って、ピントラクター5上の用紙3には送出し方向への引張り力が作用する。」(2頁右上欄1行ないし4行)と記載されているが、この記載中にもあるとおり、「タイミングベルト5a」と「プラテン2」と「ローラ4」とは併列的に述べられ、しかも、これらの3つの部材は「同期して回転駆動される」と明記されているのに、「タイミングベルト5a」と「プラテン2」とだけが回転駆動とされ、併列的に述べられている「ローラ4」だけが、これらと異なり回転駆動されていないと解釈することは不合理である。

ハ.引用例1記載の発明においては、プラテン2とピントラクター5との間の連続用紙3に張力が発生させられている。ベルト駆動からなる構造において、プラテン2だけで用紙3を引き出せるとみることは技術的に不可能である。それを可能としている従来技術も皆無である。

ニ.乙第8号証の出願人は、引用例1記載の発明の出願人と同じ「ブラザー工業株式会社」であるが、引用例1記載の発明の2年半後に出願された乙第8号証の考案ですら、「第1」と「第2」の各「押圧ローラ」及び「用紙案内部材13」を必須の構成として採用することにより駆動機構と接続することなく、用紙を引き出すことを初めて実現しているのであるから、引用例1記載の「引出し装置」がなんら駆動機構と接続伝導されていないと解するには、到底無理があるといわざるを得ない。

(2)  取消事由2(一致点認定の誤り-その2)

〈1〉 審決が、本願第1発明と引用例1記載の発明とは「無限軌道部材駆動装置が駆動ロール装置に隣接して位置決めされ」ている点で一致していると判断したのは誤りである。

〈2〉 まず、本願第1発明でいう「隣接して位置決めされ」ていることの技術的意味について述べる。

本願第1発明の特許請求の範囲において、「かつ機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置」と一義的に明記されているとおり、「無限軌道機構12はギヤ38がギヤ18と噛合うようにローラプラテン機構10近くに配置されている」(明細書10頁17行ないし19行)ことを意味している。

ギヤ駆動であっても、その両ギヤ装置が隔って配置されると、加圧装置位置において用紙のゆるみやずれの変動が大きくなり、しかも、無限軌道機構による紙送り作用も不十分となるため、その張力をコントロールする部材が新たに必要となり、もはや本願第1発明のように単に紙を押圧するだけの「加圧装置」だけでは紙送りが困難となってしまうからである。

このことを逆からいうと、「隣接して位置決めされ」とは、「加圧装置」のみで紙送りが可能となる程度の関係において配置されていることを意味する。

本願明細書は、「ギヤ18はギヤ38と切り離される」(12頁10行)態様についても言及しているが、そこでの記載では、「別々の駆動装置(…)を用いることが出来る。そのような場合」(12頁8行、9行)とあるとおり、第1と第2の駆動装置を必須の要件とする本願発明の特許請求の範囲(9)項の独立クレームの発明に関する記載であるから、本願第1発明の説明とは無関係の記載である。

ちなみに、本願第1発明は、上記「かつ機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置」の規定から明らかなとおり、その駆動装置は、1個のものに限定されており、2個以上のものも含まれると解する余地はない。

この構成要件も、引用例2、引用例3、乙第1号証のいずれにも開示されていない。

〈3〉 これに対し、引用例1記載の発明においては、以下の理由からして「隣接して位置決めされ」ていない。

イ.引用例1記載の発明は、ベルト駆動であって、本願第1発明のように歯車伝導系によるものではない。したがって、本願第1発明のように、歯車伝導系を採用し、かつその両ギヤ装置を隣接して位置決めするのみで紙ウェブに発生した張力をコントロールしようとする技術的思想がそもそも存在しない。

ロ.引用例1記載の発明の「引出し装置」は、上述したとおり本願第1発明の「加圧装置」とは異なるものである。引用例1記載の発明において、歯車伝導系が採用され、かつその「引出し装置」が単なる押圧部材にすぎないときに、はじめて「隣接して位置決めされ」といい得る。プラテン2のみで用紙を引き出せるという技術的思想の存在しない引用例1においては「隣接」の構成が開示もしくは示唆されているということはできない。

(3)  取消事由3(相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の誤り)

〈1〉 審決は、「駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすることは当業者が適宜選択的に設定し得る程度の設計上の問題にすぎない」とするが、この判断は誤りである。

〈2〉 審決は、その判断の根拠として、「また引用例3には、本願第1発明の駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置にそれぞれ対応するプラテンローラとピントラクタの送給スプロケットを単一の駆動モータによって回転駆動するに際し、歯車伝導系と巻掛け伝導系とを適宜選択できるとし、すなわち単一の駆動モータにより歯車伝導系を介してそれぞれを回転駆動するようになした点が記載されている」としているが、引用例3には、そのような記載はない。

引用例3には、本願第1発明における「第1のギヤ装置」に相当する「駆動モータの出力軸」と、本願第1発明における「第2のギヤ装置」に相当する「回転体の支持軸」との伝導系を「歯車伝導系で形成してもよい。」(4頁左下欄16行)と記載されているのみであって、本願第1発明のように、「第2のギヤ装置」に相当する軸と「第3のギヤ装置」に相当する軸については何らの記載もない。

〈3〉 本願第1発明の技術的思想は、第2及び第3の装置をそれぞれギヤ装置とし、その両ギヤ装置を隣接して配置する構成のみで、その両装置間の紙ウェブ上の張力をコントロールしようとしたところにある。つまり引用例3における「プッシャローラ21」のような駆動機構により駆動されるローラ部材を不要とするところにその技術的思想があるのである。

しかるに、引用例3には、「巻掛け伝導系で形成してもよい」(4頁左下欄14行)と記載されていると共に、「プッシャローラ21」を必須の要件としているのであるから、本願第1発明の技術的思想は開示も示唆もされていない。

〈4〉 それ故、「歯車伝導系とすることは、当業者が適宜選択的に設定し得る程度の設計上の問題にすぎない」とすることはできない。

(4)  取消事由4(相違点〈3〉に対する判断の誤り)

〈1〉 審決は、「対比する2個の回転体の回転速度比、周速度比は歯車伝導系においてギヤ比や回転体の直径比の設定により決定されるところである。したがって、駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きくするために、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比を設定することは、当業者が適宜なし得る程度のものである。」とするが、この判断は誤りである。

〈2〉 すなわち、相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の誤りで述べたように、「歯車伝導系」とすることが容易とはいえないのであるから、その間のギヤ比や回転体の直径を考慮することはあり得ない。

(5)  取消事由5(顕著な作用効果の看過)

〈1〉 審決は、本願第1発明は「全体構成でみても引用例1ないし引用例3記載の発明から予測できる作用効果の総和以上の顕著な作用効果を奏するとは認められない。」とするが、この判断は誤りである。

〈2〉 本願第1発明のウェブ移動装置では、駆動装置からの動力は、第1のギヤ装置、第2のギヤ装置、第3のギヤ装置の順に伝達され、他方、ウェブは、無限軌道部材駆動装置から駆動ロール装置の順に移動される。

このような構成において、無限軌道部材駆動装置から供給されたウェブに張力を与え、かつウェブを移動させるに際し、第2のギヤ装置、すなわち、第2のギヤ装置に固定された駆動ロール装置の役割が非常に重要となる。つまり、駆動ロール装置によって、ウェブを巻き掛け、かつウェブと駆動ロール装置との間の摩擦抵抗により、ウェブに張力を与えてウェブを確実に移動させなければならないからである。

本願第1発明においては、駆動ロール装置によってウェブを確実に移動させるための一手段として、駆動ロール装置とウェブとの間の接触面積を大きくし、両者間の摩擦抵抗を大きくし、ウェブを確実に移動させることができ、同時に、そのような手段を講じたとしても装置全体をコンパクトに維持することができるという作用効果を奏する。

詳述すると、本願第1発明におけるギヤ装置の接続によれば、駆動装置からの動力は、第1のギヤ装置から、第1のギヤ装置に機械的に接続された第2のギヤ装置、第2のギヤ装置に機械的に接続された第3のギヤ装置へ伝達される。この場合、第2のギヤ装置は、第1のギヤ装置と第3のギヤ装置との間に接続された中間のギヤ(アイドルギヤ)であるため、第3のギヤ装置の角速度は、第1のギヤ装置との関係において決定することができる。

そうすると、駆動ロール装置の半径は、第2のギヤ装置の半径内の範囲で大きな値に設定可能であり、ウェブとの接触面積を大きくすることができる。そして、第2のギヤ装置を大きくしたとしても、各ギヤ装置は直列に接続されているため、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置とは、隣接して位置決めされるので、装置全体の大きさをコンパクトに維持できる。

これに対し、第1のギヤ装置に第2のギヤ装置が接続され、かつ第1のギヤ装置が中間のギヤ装置を介して第3のギヤ装置に接続され、第1のギヤ装置、第2のギヤ装置、第3のギヤ装置にそれぞれ本願第1発明に相当する駆動装置、駆動ロール装置、無限軌道部材駆動装置が固定されたギヤ駆動系を仮定すると、駆動ロール装置とウェブ間の接触面積を大きくするために第2のギヤ装置の半径を大きくしようとする場合には、第2のギヤ装置が第3のギヤ装置と干渉しないようにするために、第3のギヤ装置と第1のギヤ装置とを離間しなければならない。たとえば、中間のギヤ装置の半径を大きくしたり、複数の中間のギヤ装置を連結したり、あるいは巻き掛けベルトを用いて伝達をする必要がある。

つまり、このような構成においては、第2のギヤ装置を大きくしようとすれば、第3のギヤ装置と第1のギヤ装置とは隣接して位置決めすることはできず、装置全体の大きさをコンパクトにまとめることはできない。

〈3〉 引用例1及び引用例3記載の発明は、ともに「連続用紙」のみをその対象とするものである。したがって、これらの装置を「単一シート」に適用する場合には、引用例1記載の「引出し装置」4や引用例3記載の「プッシャローラ」21の他に、引用例2記載の発明における「プレッシャーローラ」26が設けられなければならない。

〈4〉 いずれにしても、プラテンのみで紙の張力をコントロールし、したがって、紙を押圧する部材のみで紙送りできるという技術的思想は各引用例には存しないのであるから、従来技術においては、本願第1発明のようなコンパクトな装置を実現するという作用効果を奏しない。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3は認める、同4は争う。審決の認定判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

2(1)  取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)について

〈1〉 審決が、引用例1記載の「ローラ」は本願第1発明の「第1の加圧装置」に相当すると判断したことに誤りはない。

〈2〉 本願第1発明における「第1の加圧装置」は、駆動ロール装置(プラテン)のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置(ピントラクタ)のウェブ駆動速度よりも大きく、これらの間のウェブに一定の張力を生じさせるようにしたウェブ移動装置において、「前記駆動装置が作動されるとき、ウェブを前記駆動ロール装置に対抗して移動させるようにして位置決めされた」ものであり、そして、「紙ウェブ28を第2図に示すようにローラ14のまわりに強制的に移動せしめる…」(10頁7行、8行)ものである。

そして、本願第1発明における「第1の加圧装置」は、実施例として本願明細書及び図面中に記載され、20及び22で表示された下側一次ローラ及び出口ローラのいずれか少なくとも一方を含むものであり、この下側一次ローラ20及び出口ローラ22は、それぞれ心軸24及び26上に回転装着されており、紙ウェブ28を第2図に示すようにローラ14のまわりに強制移動せしめるように配置させているものである。

すなわち、本願第1発明における「第1の加圧装置」は、所定の速度で回転駆動されるプラテンに加圧、圧接されて、プラテン上の紙ウェブを介してプラテンに対して摩擦伝導的にプラテンと共に回転し、プラテンと協動してウェブを強制移動させるローラを包含するものであるといえる。

原告は、本願第1発明の「第1の加圧装置」は、その加圧という名称のとおり単に紙ウェブ28を駆動ロール装置14に押圧するだけの機能しか有せず、駆動機構に接続されていない旨主張するけれども、本願第1発明における「第1の加圧装置」は、駆動機構に積極的に接続されている、いないに拘わらず、前述したように、紙ウェブを駆動ロール装置に押圧し、それによって駆動ロール装置と共にウェブを強制移動せしめる機能を有するものである。

また、原告は、本願第1発明は、「第2のギヤ装置」と「第3のギヤ装置」の両ギヤ装置が「隣接して位置決めされ」、無限軌道機構とプラテン機構との間の間隔が小さくなっているので、単に紙ウェブを加圧するだけの「第1の加圧装置」によって、紙ウエブをプラテンに密着させることができ、さらに巻付け角度も大きくとることができ、紙ウェブの保持も容易であり、加圧装置をプラテン機構に強力に押し付けたり、プラテン機構と同期した回転を与える必要がない旨の主張をし、このことは「第1の加圧装置」を駆動装置と接続させることが技術的に困難であること、本願明細書の記載からみてもこのような接続を排除していると解されることから明白であると主張する。

しかしながら、本願第1発明においては、第2及び第3のギヤ装置は、単に機械的に接続されているだけであって、「隣接して位置決めされ」ていると特定されていない。

また、本願第1発明において、駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置とが「隣接して位置決めされ」ており、それらの間隔は原告のいうように小さくなっているとしても、この小さい間隔としたことが、紙ウェブのプラテンへの密着や保持を確実にすることに直接影響するものではなく、この間隔を小さくしたことによって、加圧装置をプラテン機構に強力に押し付けたり、プラテン機構と同期した回転を与える必要がないといえるものでもなく、原告の主張は妥当ではない。

〈3〉 原告は、引用例1記載の「ローラ」は駆動機構と接続されているから本願第1発明における「第1の加圧装置」と相違する旨主張するが、この「ローラ」は、プラテンの連続用紙の駆動速度をピントラクターの連続用紙の駆動速度よりも大きくして、プラテンとピントラクターとの間に一定の張力を生じさせる連続用紙の給送装置において、プラテンの外周面に接し、プラテンと協動して連続用紙を引き出すためのものである。

さらに、引用例1の「タイミングベルト5a」に関する記載、及び第1図における回動方向を示す矢印が連続用紙の移動方向と共に一方のスプロケット8とプラテン2に付されていること等からみて、引用例1記載の発明では、一方のスプロケット8とプラテン2が駆動装置に直接接続されて、積極的に回転駆動され、ローラ4は積極的に回転駆動されるプラテンの外周面に接し、摩擦伝導的に回転されるものである。

原告は、引用例1記載の発明の特許請求の範囲には、プラテン2及びローラ4について「引出し装置(2、4)」と記載されており、「引出し」という用語自体が「ローラ」が駆動機構と接続していることを表現している旨主張するが、この「引出し装置」なる用語は、所定の速度で回転駆動されているプラテン2とプラテン2に圧接され摩擦伝導的に回転されるローラ4を指称し、これらが協動して用紙3を引き出すものであることを表現した用語であって、これにより、ローラが駆動機構と直接接続していることを表現するものではない。

〈4〉 したがって、本願第1発明における「第1の加圧装置」と引用例1記載の発明における「ローラ」は、同じ機能を奏するものであり、構成上の差異も格別のものではないから、「ローラ」は「第1の加圧装置」に相当し、審決に原告の主張するような誤りはない。

(2)  取消事由2(一致点の認定の誤り-その2)について

〈1〉 審決が、本願第1発明と引用例1記載の発明とは、「無限軌道部材駆動装置が駆動ロール装置に隣接して位置決めされ」ている点で一致していると判断したことに誤りはない。

〈2〉 本願第1発明においては、無限軌道部材駆動装置に関しては、特許請求の範囲のd.の記載からみて、無限軌道部材駆動装置は、駆動ロール装置に「隣接して位置決めされ」、かつ「第3のギヤ装置を含む」とされているところであり、第3のギヤ装置は、第2のギヤ装置とは単に「機械的に接続され」ているとするのみであり、第3のギヤ装置と第2のギヤ装置が直接的に噛み合うような構成に特定されているものではない。

したがって、本願第1発明における「隣接して位置決めされ」ていることの技術的意味が、「無限軌道機構12はギヤ38がギヤ18と噛み合うようにローラプラテン機構10近くに配置されている」ことを意味しているとの原告の主張は、要旨の記載に基づくものではなく、本願第1発明の一実施例に基づく主張であって、当を得たものではない。

本願第1発明における「隣接して位置決めされ」は、無限軌道部材駆動装置と駆動ロール装置との位置関係あるいは配置関係、すなわち、無限軌道部材駆動装置が駆動ロール装置の近くに、あるいは付近に配置されていることのみを意味するものであり、第1の加圧装置との関係や、さらには無限軌道部材駆動装置や駆動ロール装置への駆動伝達手段との関係において定義づけるべきではない。

原告は、原告の主張する「隣接して位置決めされ」の技術的意味の根拠として、ギヤ装置が隔って配置されると、加圧装置位置において用紙のゆるみやずれの変動が大きくなり、無限軌道機構による紙送り作用も不十分となるため、本願第1発明のように単に紙を押圧するだけの「加圧装置」だけでは紙送りが困難となるからであるとし、本願第1発明における「隣接して位置決めされ」とは、「加圧装置」のみで紙送りが可能となる程度の関係において配置されていることを意味する旨の主張をする。

しかしながら、原告の本願第1発明における「第1の加圧装置」の技術的意味の認識、及び「第1の加圧装置」と「隣接して位置決めされ」との関連についての認識が誤っていることは、既に述べたとおりである。

〈3〉 原告は、引用例1記載の発明において、ピントラクターはプラテンと「隣接して位置決めされ」ていない旨の主張をし、その根拠として、引用例1記載の発明はベルト駆動であって歯車伝導系によるものでないこと、及び引用例1記載の発明における「引出し装置」は本願第1発明における「第1の加圧装置」とは異なるものであることをあげている。

しかしながら、引用例1には、ベルト駆動であるとの記載はなく、また、引用例1記載の発明がベルト駆動であると解すべき格別の根拠もない。また、引用例1記載の「ローラ」が本願第1発明における「第1の加圧装置」に相当するものであること、及び「隣接して位置決めされ」を「第1の加圧装置」との関係において定義づけることが誤りであることは、いずれも前述したとおりである。

〈4〉 いずれにしろ、引用例1記載の発明において、ピントラクターは、プラテンとの間に格別な装置や部材を介在させることなく、プラテンの後方にある間隔をおいてプラテンの近くに配置され、換言すれば、ピントラクターは、プラテンに「隣接して位置決めされ」ているところであり、この点を一致点とした審決の判断に何ら誤りはない。

(3)  取消事由3(相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の誤り)について

〈1〉 審決が、「駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすることは、当業者が適宜選択的に設定しうる程度の設計上の問題にすぎない」と判断したことに誤りはない。

〈2〉 原告は、引用例3には、本願第1発明における「第1のギヤ装置」に相当する「駆動モータの出力軸」と、「第2のギヤ装置」に相当する「回転体の支持軸」との伝導系を「歯車伝導系で形成してもよい。」と記載されているのみであって、本願第1発明のように、「第2のギヤ装置」に相当する軸と「第3のギヤ装置」に相当する軸については何らの記載もないから、審決の相違点〈1〉及び相違点〈2〉の判断における引用例3の記載についての認定は誤りである旨主張する。

しかしながら、審決は、相違点〈1〉及び相違点〈2〉の判断の前段に当たる、「駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすること」について上記認定をしたものであり、引用例3に、本願第1発明における第2のギヤ装置と第3のギヤ装置の関係を含む具体的駆動伝導系が記載されていると認定したものではない。

そして、引用例3記載の発明の特許請求の範囲(1)項には駆動伝導系について特定がないこと、及び、引用例3には、「上記-実施例では駆動機構の動力伝導系は歯車伝導系および巻掛け伝導系を用いたが、駆動モータの出力端と送給スプロケットの支持軸の伝導系を巻掛け伝導系で形成してもよいとともに、駆動モータの出力軸と回転体の支持軸の伝導系を歯車伝導系で形成してもよい。」(4頁左下欄11行ないし16行)と記載されており、この記載は、第1図ないし第4図に実施例として示された、駆動モータの出力端と送給スプロケットの支持軸の伝導系を歯車伝導系で形成し、かつ駆動モータの出力軸と回転体の支持軸との伝導系を巻掛け伝導系で形成した装置を前提とし、この装置の駆動伝導系のうち、駆動モータの出力端と送給スプロケットの支持軸の伝導系のみを、歯車伝導系に代えて巻掛け伝導系で形成してもよいし、また駆動モータの出力軸と回転体の支持軸との伝導系のみを巻掛け伝導系に代えて歯車伝導系で形成してもよいことを意味するものであることからみて、審決の相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断における引用例3の記載内容の認定に誤りはなく、これを根拠とする相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する前記判断にも誤りはない。

〈3〉 また、原告は、本願第1発明の技術的思想は、第2及び第3の装置をそれぞれギヤ装置とし、その両ギヤ装置を隣接して配置する構成のみで、その両装置間の紙ウェブ上の張力をコントロールしようとしたところにある旨主張するが、本願第1発明においては、両ギヤ装置を隣接させた構成を必須の構成要件とするものでない。

これを、駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置を隣接させた構成を前提とする趣旨であると善解してみても、これらの部材を隣接させた構成と紙ウェブの張力の問題とは直接的に関係するものでないことは、既に述べたとおりである。

〈4〉 このように、相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の前段の判断が誤りであるという原告の主張は根拠がない。

(4)  取消事由4(相違点〈3〉に対する判断の誤り)について

〈1〉 原告は、相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の前段の判断が誤りであることを根拠として、審決が、相違点〈3〉について「対比する2個の回転体の回転速度比、周速度比は歯車伝導系においてギヤ比や回転体の直径比の設定により決定されるところである。したがって、駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きくするために、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比を設定することは、当業者が適宜なし得る程度のものである。」とした判断は誤りであると主張する。

〈2〉 審決における相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の前段の判断に誤りがないことは前述したとおりであるから、原告の主張は根拠がない。

(5)  取消事由5(顕著な作用効果の看過)について

〈1〉 原告は、審決が、本願第1発明は「全体構成でみても引用例1ないし引用例3記載の発明から予測できる作用効果の総和以上の顕著な作用効果を奏するとは認められない。」とした判断は誤りであると主張する。

〈2〉 原告は、この理由として、本願第1発明において、駆動ロール装置の半径は第2のギヤ装置の半径内の範囲で大きな値に設定可能であり、このことによって駆動ロール装置とウェブとの間の接触面積を大きくし、両者間の摩擦抵抗を大きくし、ウェブを確実に移動させることができ、また、他の駆動伝導系を採用する場合と比較して装置全体をコンパクトに維持できるという作用効果を奏する旨の主張をしている。

しかしながら、紙ウェブに張力を付与するための駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置の両駆動速度比は、それらに固定される第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比、及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比によって定まるものであり、第1のギヤ装置に対する第3のギヤ装置の角速度比は、駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置の両駆動速度比の決定には格別影響を及ぼす事項ではない。したがって、第2のギヤ装置の半径は、第3のギヤ装置の半径との関係で設定すべきものであり、第3のギヤ装置の角速度が第1のギヤとの関係において決定することができるからといって、任意の値に設定し得るものでない。さらに、駆動ロール装置の直径は、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比に加えて、無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比によって定めるべきものであり、第2のギヤ装置の半径の範囲で任意の値に設定し得るものでもない。このように、原告の主張は、前提において誤っており、当を得ていない。

また、原告の主張する、装置全体をコンパクトにすることができるという作用効果も、駆動伝達手段を特定したことにより、当業者にとって予測し得た作用効果にすぎず、引用例1ないし引用例3記載の装置、乙第1号証記載の従来より知られているウェブ移動装置と比較して格別顕著なものともいえない。

〈3〉 原告は、また、引用例1及び引用例3記載の発明は、ともに「連続用紙」のみを対象とするものである旨主張する。

たしかに、引用例1記載の装置は、連続用紙のみを対象として記載されているとはいえ、この種の紙ウェブ移動装置において、連続用紙と共に単一紙シートをも移送し得るようにすることは、引用例2や乙第5号証にも記載されているように、周知慣用の手段であり引用例1記載の装置もピントラクターを介することなく、単一紙シートをも移送し得るようにすることは、当業者であれば適宜設定し得る程度の事項である。

〈4〉 原告は、いずれにしても、プラテンのみで紙の張力をコントロールし、したがって、紙を押圧する部材のみで紙送りできるという技術的思想は各引用例には存しないのであるから、従来技術においては、本願第1発明のようなコンパクトな装置を実現するという作用効果を奏しない旨主張するが、この主張も本願第1発明における「第1の加圧装置」についての誤った認識に基づくものであり、当を得ない。

第4  証拠関係

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本願発明の要旨)、同3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  そこで、以下原告の主張について検討する。

1  成立に争いのない甲第2号証(願書並びに同添付の明細書及び図面)、同第3号証(昭和59年2月13日付け手続補正書、以下「手続補正書(1)」という。)、同第4号証(平成3年2月12日付け手続補正書、以下「手続補正書(2)」という。)、同第5号証(平成4年2月3日付け手続補正書、以下「手続補正書(3)」という。)によれば、本願明細書には、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果について、次のとおり記載されていることが認められる。

(1)  本願発明は、ウェブ移動装置に関するものであり、特に打撃プリンタまたは他のプリンタのための改良された紙送りシステムに関する。(願書添付の明細書6頁13行ないし15行)

(2)  プリンタ紙送りシステムにおいては、紙ロール、トラクタ扇折り畳み紙及び単一紙シートを含む種々のタイプの紙を送れる能力を備えることが望ましい。そのようなシステムは、また「短距離引き裂き」能力、すなわち、扇折り畳み紙の個々のシートを最小の無駄部分をもって切り離す能力を有しているのが望ましい。通常の無限軌道部材(トラクタ)駆動システムにおいては、紙は引き裂きが発生する以前にトラクタ中を通過しなければならず、したがって、フォーム紙の一部分が無駄となってしまう。 他の従来技術も、この問題の解決に努力しており、例えば紙を固定プラテン中に押し込むとか、ピンホイールを直接プラテン上に固定するとか、ローラプラテン及びトラクタを同一速度で駆動するとかの試みがなされている。

平坦なプラテンの前方にある固定ギャップ中に紙を押し込むという方法は、あるフォームの紙に対しては有効であるが、他のフォームの紙は押し込むのに十分な剛性を有していない。

ピンホイールをプラテン上に直接固定する方式は、引き裂きの問題を解決するが、1つの幅の紙フォームしか用いることができず、紙の負荷も困難である。ローラプラテン及びトラクタを共に駆動する他の従来システムでは、これらの間のたるみを除去する方法がない。(同6頁16行ないし8頁8行)

(3)  本願発明は、無限軌道部材駆動機構と協働するフリクションタイプ駆動ロール機構を含み、これら機構間に一定の紙張力を誘起せしめるための手段装置を含む紙送りシステムを提供することにより、従来技術の不具合を克服している。(同8頁9行ないし13行)

本願発明の1つの目的は、種々のタイプの紙フォームに用いる改良された紙送りシステムを提供することである。

本願発明の別の目的は、短引き裂き能力を備えた、組み合わせたトラクタ及びフリクション送り駆動機構を提供することである。

本願発明のさらに別の目的は、無限軌道部材(トラクタ)駆動機構と、ローラ駆動機構と、これら機構間に一定の紙張力を維持するための装置とを備えた紙送りシステムを提供することである。

本願第1発明は、これらの目的のために、要旨記載の構成(手続補正書(3)の特許請求の範囲(1)1頁2行ないし2頁4行)を採用した。(願書添付の明細書9頁6行ないし15行、手続補正書(1)の図面)

(4)  以上の構成により、本願発明は、特別な装置を付加することなく、ウェブを切り離す際に無駄なウェブ部分を最小にすることが可能であり、かつ、構造がきわめてコンパクトであるという作用効果を奏する。(手続補正書(2)の訂正文1頁3行ないし7行)

2  次に、原告主張の取消事由について検討する。

(1)  取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)について

〈1〉 原告は、本願第1発明の「第1の加圧装置」は、駆動機構と接続されていないのに対し、引用例1記載のローラは「引出し装置」であって、駆動機構と接続していることを理由に、審決が、引用例1記載の「ローラ」は本願第1発明の「第1の加圧装置」に相当すると認定したのは誤りであると主張する。

〈2〉 本願第1発明の要旨によれば、第1の加圧装置については、「駆動装置が作動されるとき、ウェブを前記駆動ロール装置に対抗して移動させるようにして位置決めされた第1の加圧装置」と記載されていることが認められるが、この記載からは第1の加圧装置が駆動機構に接続されているか否かについては必ずしも明らかではない。

そこで、前掲甲第2号証により、本願明細書の発明の詳細な説明をみると、同説明には「第1の加圧装置」の記載はない。しかしながら、「第1の加圧装置」が「複数個の下側一次ローラ20及び出口ローラ22」を指称することについては当事者間に争いがないので、この「下側一次ローラ20及び出口ローラ22」についてみると、同説明中には、「ローラプラテン機構10は1つの円筒状ローラ14を含んでおり、これは心軸16を備えており、その一端にはプラテン駆動ギヤ18が固定されている。複数個の下側一次ローラ20及び複数個の出口ローラ22がそれぞれ心軸24及び26上に回転装着されており、紙ウエブ28を第2図に示すようにローラ14のまわりに強制移動せしめるよう配置されている。」(10頁1行ないし9行)と記載されていることが認められ、さらに、その給紙機構について、以下のように記載されていることが認められる。

「第2図を参照すると、ギヤ18及びギヤ38はギヤ18と噛合う駆動ギヤ42を備えた単一ステツプモータ40によつて駆動されるのが好適である。…紙28は最初トラクタ30上を通過し、次にローラプラテン14下を通過し、次にローラ14及びローラ20、22間を通過する。ローラプラテン14の直径、トラクタ30の有効直径及びギヤ18及びギヤ38の相対寸法はローラ機構10の紙駆動速度が無限軌道機構12の紙駆動速度よりもわずかに大きくなるように選ばれる。即ち、ローラプラテン14は所定の時間間隔内にトラクタ30よりも多くの紙28を移動させようとするので、ローラプラテン14とトラクタ30間には一定の紙張力が生ずる。」(10頁20行ないし11頁15行)

これらの記載によれば、駆動ロール(プラテン)のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置のウェブ駆動速度よりもわずかに大きくしたウェブ移動装置において、下側一次ローラ20及び出口ローラ22は、紙ウェブをローラプラテン14に押圧しつつ回転し、紙ウェブに常に一定の張力を作用させつつローラプラテン14の回りを強制的に移動させるものであり、これらのローラ20、22に求められる機能は、その押圧力によってローラプラテン14との間で紙ウェブを挟持して強制移動させることであると解することができる。この機能は、ローラ20、22が駆動機構に接続されているか否かを問わず、ローラ20、22にとって不可欠である。

そして、前掲甲第2号証ないし甲第5号証によるも、本願明細書には、ローラ20、22が駆動機構に接続されているか否かについての説明はなく、本願第1発明の目的、作用効果もこれらのローラが駆動機構に接続されているか否かと直接の関係があることを認めるに足りる記載は見出せない。

また、プラテンとの間で紙を押圧挟持し、紙に一定の張力を作用させつつプラテンの回りで送るローラは、駆動機構に接続されたものも、駆動機構に接続されていないものも、いずれも本出願時周知であったと認められる。このことは、成立に争いのない甲第7、第8号証及び乙第1、第7号証によれば、引用例2記載のピンチローラ24a、24b、引用例3記載のプッシャローラ21は前者に該当し、引用例2記載のプレッシャローラ19、26、昭和53年実用新案出願登録願第17309号の願書添付の明細書及び図面を撮影したマイクロフィルムの写し記載の考案の送りローラ40、押圧部材48、ローラ52、昭和54年実用新案出願公告第21047号公報記載の考案のプレッシャローラ4等は後者に該当すると認められることから明らかである。したがって、本願明細書に駆動機構との接続について格別の記載がない以上、本願第1発明のローラ20、22について、特に駆動機構に接続されないもののみに限足して解すべき理田はないというべきである。

〈3〉 原告は、本願第1発明では、「第2のギヤ装置」と「第3のギヤ装置」とが歯車伝導系とされ、かつ、両ギア装置が「隣接して位置決めされ」ているので、正確な紙送りが可能となり、したがって、「第1の加圧装置」が駆動機構と接続されていなくても、加圧機能だけで十分に紙ウェブをロール14に密着させ、かつ、正確に引き出すことができるから、本願第1発明の「第1の加圧装置」は駆動機構と接続されていない旨主張する。

しかしながら、本願第1発明の要旨によれば、第2及び第3のギヤ装置については、「機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置」と記載されているのみであることが認められ、ここで、「機械的に接続」とは、必ずしもギヤ装置が直接噛み合っていることのみをいうとは限らないから、このことが両者の位置関係までも規定しているということはできない。したがって、この記載から、本願第1発明の第2及び第3のギヤ装置が「隣接して位置決めされ」ているものに必ずしも限定して解すべき理由はない。

仮に、この点を措くとしても、「加圧機能だけで十分に紙ウェブをロール14に密着させ、かつ、正確に引き出すことができる」場合の加圧力は一律に定まるものではなく、かつ、紙ウェブをロール14に密着させる力は「第1の加圧装置」の押圧力の影響を受けること、つまり、「第1の加圧装置」の押圧力を大きくすれば、それだけ密着力が増すことは自明であるから、「両ギア装置が隣接して位置決めされ」ていることと、「加圧機能だけで十分に紙ウェブをロール14に密着させ、かつ、正確に引き出すことができる」こととは、必ずしも関係があるということはできない。

したがって、両ギア装置が「隣接して位置決めされ」ていることを理由に、「第1の加圧装置」が駆動機構に接続されていないとする原告の主張は失当である。

〈4〉 これに対し、成立に争いのない甲第6号証(昭和56年特許出願公開第93643号公報)によれば、引用例1は、名称を「連続用紙の給送装置」とする発明であって、その明細書には以下のように記載されていることが認められる。

「プラテン2の送出し側にはそのプラテン2の外周面に接しプラテン2と協働して用紙3を引出すためのローラ4が設けられている。」(2頁左上欄2行ないし5行)

「タイミングベルト5aは一方又は両方のスプロケツト8を介して前記プラテン2の給送速度より若干遅い速度で第1図の矢印方向に間欠的に回動され、前記ピン7と送り用孔6との噛合により用紙3をプラテン2側へ送込むようになつており、このタイミングベルト5a、プラテン2及び前記ローラ4は同期して回転駆動されるようになつている。従つて、ピントラクター5上の用紙3には送出し方向への引張り力が作用する。」(2頁左上欄14行ないし右上欄4行)

これらの記載によれば、ローラ4は、タイミングベルトの速度をプラテンの用紙給送速度よりも若干遅くして(つまり、プラテンの用紙給送速度をタイミングベルトの速度よりも若干速くして)用紙に張力が生じるようにした用紙の給送装置において、用紙をプラテン2との間で押圧挟持し、用紙に一定の張力を作用させつつプラテン2の回りで送るものであると解され、この点において本願第1発明の第1の加圧装置と何ら異なるところはない。

〈5〉 したがって、審決が、引用例1記載の「ローラ」が本願第1発明の「第1の加圧装置」に相当すると判断したことは正当である。

〈6〉 なお、原告は、引用例1記載の発明の特許請求の範囲では、プラテン2及びローラ4は、「引出し装置(2、4)」と記載されているから、ローラ4は駆動機構と接続している旨主張するが、前示〈1〉のとおり、本願第1発明の第1の加圧装置自身駆動機構に接続されたものを排除しているわけではないから、その主張は採用することができない。

また、原告は、本願第1発明の構成において、その「第1の加圧装置」をその駆動機構と接続させることは技術的に不可能であり、かつ、本願第1発明の目的、作用効果に関する本願明細書の記載をみてもそのような態様は排除していると解されるから、審決の認定は誤りであるとも主張する。しかしながら、本願第1発明の構成において、何故「第1の加圧装置」と駆動機構を接続することが技術的に不可能なのか、また、本願第1発明の目的、作用効果に関する本願明細書の記載から、何故そのような態様を排除していると解すべきかについては、本願明細書に記載された前示1の目的、作用効果をみても明らかではないから、その主張も採用することはできない。

〈7〉 したがって、審決が、引用例1記載の「ローラ」は本願第1発明の「第1の加圧装置」に相当すると認定したことに誤りはない。

(2)  取消軸2(一致点の認定の誤り-その2)について

〈1〉 原告は、審決が、本願第1発明と引用例1記載の発明とは「無限軌道部材駆動装置が駆動ロール装置に隣接して位置決めされ」ている点で一致していると認定したのは誤りであると主張し、本願第1発明において、「隣接して位置決めされ」ていることの技術的意味について、「無限軌道機構12はギヤ38がギヤ18と噛合うようにローラプラテン機構10近くに配置されている」こと、つまり、「加圧装置」のみで紙送りが可能となる程度において配置されることを意味するとし、引用例1記載の発明と異なる旨主張する。

まず、原告の主張する「隣接して位置決めされ」の技術的意味の当否について検討する。

本願第1発明の要旨には、「該無限軌道部材駆動装置が前記駆動ロール装置に隣接して位置決めされかっ機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置を含む無限軌道部材駆動装置、を包含し、」と記載されていることが認められ、また、それに関連して、前掲甲第2号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「無限軌道機構12はギヤ38がギヤ18と噛合うようにローラプラテン機構10近くに配置されている。」(10頁17行ないし19行)と記載されていることが認められる。

しかしながら、これらの記載によっては、原告のいう技術的意味は明らかでなく、本願明細書全体をみても、「無限軌道機構12はギヤ38がギヤ18と噛合うようにローラプラテン機構10近くに配置されている」ことが「加圧装置」のみで紙送りが可能となる程度において配置されることを意味することについて何ら説明されていない。

そして、「第1の加圧装置」の押圧力は、前示〈3〉のとおり、一律に規定できないのであるから、本願第1発明の要旨における「隣接して位置決めされ」の意味を、無限軌道機構12とローラプラテン機構10とが「加圧装置」のみで紙送りできるように位置決めされていると解することはできない。

前掲甲第2号、第3号証によれば、本願書添付の図面の第1図、第2図は本願発明に係る実施例の1つを図示したものであって(明細書9頁18行ないし10頁1行)、「隣接して位置決めされ」たの意味をこの実施例に基づいて限定的に解し得ないのみならず、このように解したとしても、これは、無限軌道機構12とローラプラテン機構10とがギヤ38がギヤ18と噛み合うように互いに近くに隣り合って配置されているという程度の漠然とした意味にすぎないといえるから、これを原告の主張するような限定された技術的意味に解することはできない。

〈2〉 また、原告は、引用例1記載の発明は、イ.ベルト駆動であって、歯車伝導系によるものではないから、本願第1発明のように、歯車伝導系を採用し、両ギヤ装置を隣接して位置決めするのみで紙ウェブに発生した張力をコントロールしようとする技術的思想がない、ロ.引用例1記載の「引出し装置」は本願第1発明の「加圧装置」とは異なるものであり、引用例1記載の発明においては、プラテン2のみで用紙を引き出せるという技術的思想は存在しないから、引用例1においては「隣接」の構成が開示もしくは示唆されていないことを理由に、審決が、本願第1発明と引用例1記載の発明とは「無限軌道部材駆動装置が駆動ロール装置に隣接して位置決めされ」ている点で一致していると判断したのは誤りである旨主張する。

しかしながら、これらの主張は、いずれも前記「隣接して位置決めされ」の技術的意味についての誤った解釈を前提とするものであり、失当である。

他方、前掲甲第6号証によれば、引用例1記載のプラテンとピントラクターは、その第1図からみても、また、円滑な紙送りを行うためにも、その両者を近くに配置するのは技術常識上当然であって、逆に両者を隣接させないで配置する格別の理由も認められないことからしても、引用例1記載のプラテンとトラクタは、互いに近くに、つまり、隣接して配置されていると解するのが相当である。

〈3〉 してみると、審決が、引用例1記載のピントラクターについて、「プラテンへの連続用紙の送込み側でプラテンに隣接して位置決めされ」と認定したことを誤りとすることはできないから、審決に原告主張の一致点の認定の誤りは存しない。

(3)  取消事由3(相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断の誤り)について

〈1〉 原告は、本願第1発明の技術的思想は、第2及び第3の装置をそれぞれギヤ装置とし、その両ギヤ装置を隣接して配置する構成のみで、その両装置間の紙ウェブ上の張力をコントロールしようとしたところにあり、つまり、引用例3における「プッシャローラ21」のような部材を不要とするところにその技術的思想がある旨主張する。

しかしながら、本願第1発明の要旨には、第2及び第3のギヤ装置については、「機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置」と記載されていることが認められるところ、この記載によれば、第2及び第3のギヤ装置は機械的に接続されていると規定されているのみであるから、前示(2)のように、その構成について、両ギヤ装置を隣接して配置する構成に必ずしも限定して解すべき理由はない。

この点を措くとしても、前掲甲第2ないし第5号証によれば、本願第1発明が両ギヤ装置を隣接して配置する構成のみで、その両装置間の紙ウェブ上の張力をコントロールしようとする技術的思想を有するとの点については、本願明細書には何ら記載されておらず、また、両ギヤ装置を隣接して配置する構成のみで両装置間の紙ウェブ上の張力をコントロールできるとする主張は、前示(2)における「隣接して位置決めされ」ているの技術的意味についてと同様、「隣接して」についての誤った解釈を前提とするものであるから、これを認めることはできない。

〈2〉 原告は、また、引用例3には、本願第1発明のように、「第2のギヤ装置」に相当する軸と「第3のギヤ装置」に相当する軸については何らの記載もなく、「巻掛け伝導系で形成してもよい」と記載されているとともに、「プッシャローラ21」を必須の要件としているのであるから、本願第1発明の技術的思想を開示も示唆もしていない旨主張する。

そこで検討するに、成立に争いのない甲第8号証(昭和57年特許出願公開第107352号公報)によれば、引用例3は、名称を「プリンタの紙送り装置」とする発明であって、その明細書には、次のとおり記載されていることが認められる。

「印字部の用紙送り出し側には正逆回転可能な回転体7が配置されている。この回転体7はローラであって、支持軸8に取着されている。

上記送給スプロケット5および回転体7は、駆動機構9により同じ方向に同期して回転駆動されるようになっている。駆動機構9の一例について詳しく述べれば、10は駆動モータで、その出力軸に取着した出力歯車11は上記支持軸6に取着した入力歯車12に噛合され、この歯車伝導系を介して送給スプロケット5が回転駆動されるようになっている。さらに、駆動モータ10の出力軸には溝付きのプーリ13が取着され、また上記支持軸8には軸受14を介して溝付きのプーリ15が回転自在に取付けられている。」(2頁左下欄17行ないし右下欄12行)

「上記一実施例では駆動機構の動力伝導系は歯車伝導系および巻掛け伝導系を用いたが、駆動モータの出力端と送給スプロケットの支持軸の伝導系を巻掛け伝導系で形成してもよいとともに、駆動モータの出力軸と回転体の支持軸との伝導系を歯車伝導系で形成してもよい。」(4頁左下欄11行ないし16行)

上記の記載事項中後者の記載は、一実施例では、駆動機構として、動力伝導系は歯車伝導系および巻掛け伝導系を用いたが、これに代えて、駆動モータの出力端と送給スプロケットの支持軸の伝導系を巻掛け伝導系としてもよい、また、駆動モータの出力軸と回転体の支持軸との伝導系を歯車伝導系で形成してもよいという意味に解することができるから、当業者であればこの記載は、一体として、上記「駆動モータ10の出力軸8には溝付きのプーリ13が取着され、また上記支持軸8には軸受14を介して溝付きのプーリ15が回転自在に取付けられている」という構成に適用できるのみならず、個別にこの構成に適用することも可能であると理解するというべきである。

そうすると、上記「駆動モータ10の出力軸8には溝付きのプーリ13が取着され、また上記支持軸8には軸受14を介して溝付きのプーリ15が回転自在に取付けられている」という構成を、上記「駆動モータの出力軸と回転体の支持軸との伝導系を歯車伝導系で形成してもよい」の記載にしたがって、歯車伝導系に形成できるのであるから、結局、引用例3には、駆動モータの出力軸に取着した出力歯車11と支持軸6に取着した入力歯車12とが噛合し、この歯車伝導系を介して送給スプロケット5、したがって、ピントラクターが回転駆動されるとともに、同駆動モータの出力軸と回転体(プラテン)の支持軸との伝導系を歯車伝導系で形成し、この歯車伝導系を介して回転体を回転駆動するものも記載されていると認めることができる。

〈3〉 そして、引用例3に記載された「プラテンローラ」、「ピントラクタ」が、本願第1発明のそれぞれ「駆動ロール装置」、「無限軌道部材駆動装置」に対応すると認めることができるから、審決が、「また、引用例3には、本願第1発明の駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置にそれぞれ対応するプラテンローラとピントラクタの送給スプロケットを単一の駆動モータによって回転駆動するに際し、歯車伝導系と巻掛け伝導系とを適宜選択できるとし、すなわち単一の駆動モータにより歯車伝導系を介してそれぞれを回転駆動するようになした点が記載されている」と判断した点に誤りはないというべきである。

そして、原告の相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断についての主張は、前示引用例3記載の発明の認定に誤りがあることを前提にこれをいうものであるから、その主張は、失当である。

〈4〉 したがって、審決が、「駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすることは、当業者が適宜選択的に設定し得る程度の設計上の問題にすぎない」と判断したことに誤りはない。

(4)  取消事由4(相違点〈3〉に対する判断の誤り)について

原告は、審決が、「駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりも大きくするために、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比及び駆動ロール装置の直径と無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比を設定することは、当業者が適宜なし得る程度のものである」と判断したことについて、「歯車伝導系」とすることがそもそも容易とはいえないのであるから、その間のギヤ比や回転体の直径を考慮することはあり得ない旨主張する。

しかしながら、審決の相違点〈1〉及び相違点〈2〉に対する判断に誤りがないことは前示(3)のとおりであり、駆動装置と駆動ロール装置及び無限軌道部材駆動装置の駆動伝導系を歯車伝導系とすることは、当業者が適宜選択的に設計し得る程度の設計上の問題にすぎないのであるから、審決の相違点〈3〉に対する判断に誤りはない。

(5)  取消事由5(顕著な作用効果の看過)について

〈1〉 原告は、本願第1発明におけるギヤ装置の接続によれば、第2のギヤ装置は第1及び第3のギヤ装置の中間のギヤであり、第3のギヤの角速度は、第1のギヤ装置との関係において決定することができるから、駆動ロールの半径は第2のギヤ装置の半径内の範囲内で大きな値に設定可能であり、ウェブとの接触面積を大きくすることができ、また、第2のギヤ装置を大きくしても、各ギヤ装置は直列に接続されているため、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置とは隣接して位置決めされるので、装置全体の大きさをコンパクトに維持できるのに、審決は、この作用効果を看過した旨主張する。

しかしながら、前掲甲第2号証ないし甲第5号証によるも、本願明細書には、上記作用効果について、「構造が極めてコンパクトである」(手続補正書(2)の発明の詳細な説明1頁6行、7行)と記載されているのみで、その理由について具体的には何ら説明されていない。

そこで、上記作用効果が本願第1発明の構成からみて自明であるか否かを検討する。

イ.まず、駆動ロールの半径は第2のギヤ装置の半径内の範囲内で大きな値に設定可能であり、ウェブとの接触面積を大きくすることができる点についてであるが、本願第1発明の要旨である「駆動ロール装置の一端に固定された第2のギヤ装置を有し、該第2のギヤ装置が機械的に接続されて前記第1のギヤ装置によって回転されている駆動ロール装置」、及び、「第2のギヤ装置と第3のギヤ装置との間の比および前記駆動ロール装置の直径と前記無限軌道部材駆動装置の有効直径との間の比が、前記駆動ロール装置のウェブ移動速度よりも大きく、これらの装置間に一定の張力を生じさせるようにしたことからなるウェブ移動装置」の記載によれば、駆動ロール装置の一端には第2のギヤ装置が固定されているのであるから、駆動ロールの半径を第2のギヤ装置の半径内の範囲内で大きな値に設定しても、駆動ロールの外周面が第2のギヤ装置の外周面より突出することはないといえる。そして、駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置との間に一定の張力を生じさせるようにすることからいえば、本願第1発明では、駆動ロール装置のウェブ駆動速度を無限軌道部材駆動装置の駆動速度よりもわずかに大きくすることで張力を生むのであるから、駆動ロール装置の直径の大きさは、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置の直径及び無限軌道部材駆動装置の有効直径の設定とも密接に関係しており、駆動ロール装置と無限軌道部材動装置とが互いに干渉することは当然許されない以上、他の条件を一切無視して駆動ロールの半径のみを第2のギヤ装置の半径内の範囲内で大きな値に設定可能であるとは、必ずしもいうことはできない。

しかるに、本願第1発明では、これらの条件を何ら規定するものではないから、上記イ.の作用効果を本願第1発明の要旨に基づく自明の作用効果であるということはできない。

ロ.次に、各ギヤ装置は直列に接続されているため、第2のギヤ装置と第3のギヤ装置とは、隣接して位置決めされるので、装置全体の大きさをコンパクトに維持できる点についてであるが、この作用効果は、本願第1発明の要旨の「無限軌道部材駆動装置が前記駆動ロール装置に隣接して位置決めされかつ機械的に接続されて前記第2のギヤ装置によって回転される第3のギヤ装置を含む」構成によるものであると認められる。

しかしながら、上記要旨において「機械的に接続され」とは、必ずしも直接接続するものに限定して解されないことは、前示(3)のとおりであるから、上記作用効果を自明のものであるとすることはできない。

仮に、そのように限定して解することができるとし、かつ、その構成から上記作用効果が自明のものであるといえるとしても、その作用効果は、駆動ロール装置と無限軌道部材駆動装置とが隣接して設定される場合の作用効果と変わりはないと解され、そうすると、この作用効果は、引用例1記載のブラテンとピントラクターの関係において認められる隣接の作用効果と格別相違するとは認められないものである。

〈2〉 原告は、引用例1及び引用例3記載の発明は、ともに「連続用紙」のみをその対象とするものであり、これらの装置を「単一シート」に適用する場合には、その「引出し装置」4や「プッシャローラ」21の他に、引用例2記載の発明における「プレッシャーローラ」26が設けられなければならないもので、プラテンのみで紙の張力をコントロールし、したがって、紙を押圧する部材のみで紙送りできるという技術的思想は各引用例には存しないのであるから、コンパクトな装置を実現するという作用効果を奏しない旨主張する。

しかしながら、原告が、引用例1及び引用例3記載の発明は、これらの装置を「単一シート」に適用する場合には、「引出し装置」や「プッシャローラ」の他に、引用例2記載の発明における「プレッシャーローラ」が設けられなければならないとする点は、本願第1発明においても、第1の加圧装置は、その実施例において、複数個の下側一次ローラ20及び出口ローラ22が設けられているのであって、このことからすれば、仮に、各引用例記載の装置を単一シートに適用する場合に、前記「プレッシャーローラ」が必要であるとしても、それによって、本願第1発明の装置が引用例記載のものよりも必ずしもコンパクトになるとはいえないものである。

しかも、本願明細書には、前判示のように、「構造が極めてコンパクトである」と記載されているのみであるうえ、そもそも本願第1発明の第1の加圧装置は必ずしも駆動装置に接続されていないものに限定して解すべき理由もなく、この作用効果は本願第1発明の要旨に基づくものと認めるに至らない。

仮に、本願第1発明がプラテンと紙を押圧する部材のみで紙送りはできるものとしたところで、前判示のように、そのような技術は従来周知であるから、本願第1発明がその構成を採用することによってコンパクトな装置が実現できるというのであれば、その作用効果も既に従来周知の技術でも当然達成し得たものにすぎないというべきである。

〈3〉 そうすると、審決に、原告が主張する作用効果の看過があるとすることはできない。

3  以上のとおり、原告の主張する審決の取消事由は、いずれも理由がなく、審決に原告主張の違法はない。

第3  よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担及び附加期間の定めにつき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、158条2項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 持本健司)

別紙図面 1(本願発明)

図面の簡単な説明

第1図は本発明に係る紙ウエブ移動システムの概略図、

第2図は前記システム中の紙の移動路を示す、第1図のシステムの一部の立面図である。

10…ローラプラテン機構、12…無限軌道部材駆動機構、16…心軸、18…プラテン駆動ギヤ、20…一次ローラ、22…出口ローラ、28…紙ウエブ、14…ローラ、30…トラクタ、32…ガイドバー、34…駆動シヤフト、38…トラクタ駆動ギヤ、42…駆動ギヤ。

〈省略〉

別紙図面 2(引用例1)

図面の簡単な説明

第1図はこの発明の給送装置を示す側面図、第2図(a)~(c)はこの発明の送り用孔とピンとの関係を示す平面図、第3図(a)~(c)はピン間距離が送り用孔の配列ピツチより大きい場合におけるピンと送り用孔との関係を示す平面図である.

連続用紙3、ピントラクター5、送り用孔6、ピン7、ピン間距離L1、送り用孔ピツチL2.

〈省略〉

別紙図面 3(引用例2)

図面の簡単な説明

第1図~第3図は従来の紙送り機構の説明図、第4図はこの発明の一実施例に係る紙送り機構の構成を示す斜視図、第5図は第4図における両歯タイミングベルトのA矢視拡大図、第6図は上記実施例の動作を示す説明図で(A)は連続用紙の場合、(B)単票の場合を示す図である。

21…プラテン 23a.23b…ピントラクタ 24a.24b…ピンチローラ 26…プレッシャーローラ 27…単票 28…モータ 33…両歯タイミングベルト 38…連続用紙

〈省略〉

〈省略〉

別紙図面 4(引用例3)

図面の簡単な説明

第1図~第3図は本発明の一実施例を示し、第1図は断面図、第2図は第1図中Ⅱ-Ⅱ線に沿う一部の拡大断面図、第3図は第1図中Ⅲ-Ⅲ線方向に沿って示す一部の構成図である。第4図は本発明の他の実施例を示す断面図である。

1…プラテン 2…印字ヘッド 3…送給スプロケット 6…支持軸 7…回転体 8…支持軸 9…駆動機構 20…逆転入力部 21…プッシャローラ 22…支持軸26…カッター 27…速度差形成機構 28…一方向クラッチ 29…正転用原動回転車 30…一方向クラッチ 31…逆転用原動回転車 32…一方向クラッチ 33…正転用被動回転車 34…一方向クラッチ 35…逆転用被動回転車1…回転体(プラテン)

〈省略〉

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